STORY生産者とのショートストーリー

HERNAN GOMEZ
HONDURAS

ホンジュラスからはたくさんのコーヒーを買い付けている。
この地域の生産者はまだまだ荒削りで伸び代があるところが面白いところの一つ。
スペシャルティを生産する世界の多くの農家と比べると、農業の技術も設備も至らない部分が多いかもしれない。
だけど彼らが作る豆の品質はそれらに引けを取らない。
微小気候が優れているのだ。
コーヒー豆の品質は“人”と“環境”のバランスで決定するが、ホンジュラスは環境的要因の恩恵を大いに受けていることが、この豆の美味しさとフレーバーの素晴らしさを支えている。

毎年生産地を訪ね、彼のコーヒーもまた例に漏れず継続して買い付けを行なっていた。
そんな訪問の最中にふと話してくれたエピソードがある。

エルナン ゴメスは3児の父親だ。
しかしかつて経済状況は悪く、貧困に喘いでいた。
コーヒーの収穫、生産処理を終えた彼は状況を改善しようと出稼ぎを決断した。
出稼ぎ先はアメリカ。だが不法入国によるものだった。

ホンジュラスからアメリカを目指しひたすら北上、そしてメキシコ国内のアメリカ国境近くに辿りついた。
この辺りは治安が悪く、麻薬組織が蔓延っており見つかれば間違いなく直ぐに射殺される。
彼はアメリカを目指しメキシコの荒野を4日間彷徨った。
そして意識を失なった。

気がつくと彼は病院のベッドで横になっていた。生きていた。
運良くメキシコ政府側の人間に発見され保護されたのだった。
その後ホンジュラスに強制送還された。
我が家に戻った彼に輸出業社であるロニー氏から連絡が入っていた。
「君のコーヒーが売れたよ」
それは私達NOZY COFFEEが買ったコーヒー。

彼はその資金で家族を養い、コーヒー生産を継続する事が出来たそう。
そして2015年のCOEではプレジデンシャルアワード(90点以上の評価を受けた特別な称号)で2位を獲得、翌2016年は18位入賞でNOZY COFFEEが落札。
「あの時コーヒーが売れていなければまたアメリカに向かっていた。本当に感謝している。」

2019年9月、彼はホンジュラスを代表するコーヒー生産者として来日した。
ホンジュラスの首都を訪れたのも飛行機に乗ったのも海を見たのも初めてだった。
コーヒーを買うことがこんなにも誰かの人生を変えることがあるのかと気付かされた。

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